リウマチ科
リウマチ科
リウマチ科は主に関節リウマチをみる診療科です。関節リウマチは自己免疫反応を背景に関節滑膜に炎症が生じ、慢性、時に急性の経過で関節破壊に至る全身炎症性疾患です。多くは手や足の小関節に腫れを伴った関節痛から起こりますが進行すると関節の変形と破壊、その結果、身体機能障害を引きおこす疾患なので早期診断が重要となります。少なくとも1ヶ所以上の関節腫脹があり、その原因として関節リウマチ以外の疾患の可能性がなく、関節リウマチ分類基準(アメリカリウマチ学会、ヨーロッパリウマチ学会によって提唱)を満たすと診断となります。診断後はまずメトトレキサート(MTX)内服から開始し経過をみて3ヶ月で改善が見られない場合や6ヶ月で治療目標に達しない場合は次の治療段階にすすみ生物学的製剤、JAK阻害薬を中心とした適切な治療によって、関節の炎症も治まり、通常の日常生活を送ることができる時代になっています。関節リウマチは膠原病の中で最も患者数が多い病気です。関節痛が続く、起床時に関節がこわばる、手指・手首・足の関節に腫れがみられるといった症状があれば、ぜひご相談ください。
関節リウマチの検査には血液検査と画像検査があります。
リウマトイド因子(RF) 抗環状シトルリン化ペプチド抗体(抗CCP抗体)
CRP(C反応性タンパク) ESR(赤血球沈降速度[血沈、赤沈]) MMP-3(マトリックスメタロプロテイナーゼ‐3)
赤血球 Ht(ヘマトクリット) Hb(ヘモグロビン[血色素量]) 白血球、血小板
抗核抗体、抗SS-A抗体
基本的な画像検査で、関節や骨の状態を確認します。
視診や触診では腫れていない関節の炎症(滑膜炎)をリアルタイムで確認することができます。骨の破壊や骨びらんを高感度にみることができます。
免疫抑制薬 | 免疫調整薬 |
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メトトレキサート(MTX) タクロリムス レフルノミド |
サラゾスルファピリジン ブシラミン |
関節リウマチは膠原病の中で最も多い疾患です。免疫の異常により関節を包む滑膜に炎症が起こり、それが増殖し、骨や軟骨を破壊します。放置すると関節が破壊され、日常生活に支障をきたすこともあります。主な症状は、関節の痛み、腫れ、朝のこわばりなどです。手足の指、手首に症状を認めることが多いですが、肘、肩、膝、足首などにもみられます。また、全身倦怠感や微熱、食欲低下などの全身症状や、皮膚(皮下結節など)、眼、肺など、関節以外の症状が出ることもあります。
近年、関節リウマチの治療は大きく進歩しており、骨および軟骨の破壊を積極的に抑える薬としてメトトレキサート、さらに骨破壊を強力に抑制する生物学的製剤やJAK阻害が導入され、寛解状態を目指せるようになっています。関節リウマチは早期の診断・治療がとても重要です。
頸部(くび)、肩、腰部、大腿などに痛みやこわばりを生じる原因不明の炎症性疾患です。こわばりや痛みで「痛くて寝返りがうてない」「痛みやこわばりで起き上がれない」「肩や腕があがらなくなった」などの症状が現れます。関節痛は手指や足趾(足の指)などの小関節よりも肩や大腿部などの四肢近位筋にみられ、関節の腫脹は比較的少ないことが、関節リウマチと異なる点です。全身症状としては発熱、全身倦怠感、食欲低下、抑うつ状態、体重減少を認めます。治療の第一選択薬は副腎皮質ステロイドですが、ステロイドによる副作用がある場合は、関節リウマチの治療薬であるメトトレキサートが併用されることもあります。
脊椎関節をはじめとする胸鎖関節、仙腸関節などの体幹部の関節と、手指関節などの末梢関節に炎症が生じる疾患の総称です。炎症性腰背部痛(安静で軽快せず、むしろ運動で改善する腰痛・背部痛)が脊椎関節症に特徴的な症状の一つです。また手指・肩などの痛みや腫れ、こわばりといった症状もあり初期のリウマチと類似します。皮膚の乾癬、皮膚や爪の乾燥を伴ったり、発熱や倦怠感を伴うこともあります。進行すると関節の動きが悪くなり、「背中が曲がらない」「首が回りにくい」といった症状が現れます。関節の柔軟性がなくなり骨折をしやすくなります。できるだけ早い治療介入が必要な病気です。炎症性背部痛を疑う腰痛や皮疹がある末梢手指関節炎がある場合は、早めにご相談ください。
全身の様々な臓器に炎症や障害を起こす自己免疫疾患で、関節、皮膚、腎臓、神経などを中心に症状が現れます。原因は不明で、20〜40歳台の女性に発症しやすいとされています。発熱、全身倦怠感などの全身症状、関節痛、皮疹、光線過敏症、脱毛、口内炎など多彩な症状がみられます。最も特徴的なのは蝶形紅斑と呼ばれる両側の頬部と鼻に広がる皮疹です。重症の場合、ループス腎炎と呼ばれる腎臓の障害や精神神経症状などを生じるケースもあります。指定難病であり医療助成の対象となることがあります。
全身性の自己免疫疾患で涙や唾液を作っている臓器に炎症を起こします。原因は不明ですが40〜60歳台の女性に発症しやすいといわれています。症状としては、目の乾燥(ドライアイ)、口腔乾燥(ドライマウス)などが挙げられます。乾燥症が主体となりますが、全身倦怠感、関節痛、皮疹、光線過敏症、間質性肺炎、神経障害、腎障害、筋症状、血液検査異常なども生じることがあります。現状、根本的な治療法は確立されておらず、ドライアイに対しては点眼薬や局所治療、ドライマウスに対しては内服薬やうがい薬、唾液腺マッサージなども行われます。
尿酸の結晶が関節に沈着することで起こり、足の親指の付け根に激しい痛みが生じることが特徴です。足関節、足背、アキレス腱、膝など下肢に多いですが手関節、手指、肘など上肢にも痛みが生じることもあります。発作が起きるのは一度に1ヶ所だけで、複数起きることはあまりありません。痛風の治療法としては薬物療法と生活習慣の改善がメインとなります。生活習慣の改善としては、過食を控えプリン体を多く含む食品(肉や魚の内臓や干物、エビ)やアルコールを控えます。過度な運動は尿酸値の上昇を引き起こすことがあるため、ウォーキングなど、負荷の低い運動が勧められます。
変形性膝関節症の原因には加齢や膝への負荷の蓄積などが挙げられます。主な症状は膝関節痛や荷重時の痛みで、レントゲン画像により関節裂隙の狭小化や軟骨下骨の硬化、骨棘(こっきょく)形成を認めれば膝関節症と診断できます。とはいえ、膝関節痛を主訴に受診される方は非常に多く、炎症性疾患(関節リウマチ等の膠原病、偽痛風など)、感染、代謝性疾患(痛風など)、使いすぎ・体重負荷・外傷などをきっかけに軟骨磨耗が生じるものなど、それぞれ治療法も異なるため鑑別・除外診断が重要となります。膝関節症に対する手術療法は年齢や変形程度などにより手術療法が異なりますが、主に人工膝関節全置換術(TKA)が行われています。
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