骨粗しょう症
骨粗しょう症
骨粗しょう症の診断は最新版の骨粗しょう症の予防と治療ガイドラインにのっとって当院では行っており、その際の骨密度測定はDual-energy X-ray absorptiometry(DXA デキサ)を用いて腰椎と大腿骨近位部(ふとももの付け根のことで左右どちらか、インプラントが入っているときは反対側)の両方を測定することが推奨されています。この腰椎と大腿骨近位部で測定する意義は骨粗しょう症でみられる骨折は腰椎で最も多く、次いで大腿骨近位部(ふとももの付け根)が多いからです。また、腰椎と大腿骨近位部のDXAは全身の骨密度を反映し、骨粗しょう症の薬物治療効果判定に有用であるため、当院では腰椎と大腿骨近位部のDXAを使用して骨密度を正確に評価しています。問診、レントゲン検査、DXA、血液検査などで骨粗しょう症と診断した後は、骨密度の値、年齢、性別、身長、体重、骨折歴、骨粗しょう症治療歴、多疾患の有無やステロイドを含む服薬内容の確認、喫煙、アルコール摂取量、女性の場合は閉経時期、両親の大腿骨近位部骨折歴、家での生活の様子などを参考に患者様ひとりひとりにあったオーダーメイドな骨粗しょう症治療を提案し継続して頂くようにしていきます。
骨粗しょう症は、骨の量と質の低下により骨折しやすくなる病気です。骨粗しょう症だけでは無症状ですが転ぶなどちょっとしたはずみで、背骨(脊椎の圧迫骨折)、手首の骨(橈骨遠位端骨折)、太ももの付け根の骨(大腿骨頚部骨折)などが骨折をすると症状をきたします。脊椎圧迫骨折は無症状で進行することも多く、背骨が曲がる後弯変形をきたすと慢性的に腰背部痛が残る場合もあります。また、大腿骨頸部骨折をするとその痛みで動けなくなり寝たきりになってしまう場合もあり生命予後の低下に直接つながります。高齢化の伸展に伴って増加する骨粗しょう症は、近年、生活習慣病の一つと考えられています。骨粗しょう症により骨折を生じて移動能力や生活機能の低下で健康寿命が損なうことを防ぐために早い段階で診断し骨折予防することが重要です。
骨粗しょう症は骨強度(骨の強さ)が低下して骨折しやすい状態になりますが、この骨強度は、骨量の指標となる「骨密度」と、骨構造などの「骨質」の要因によって決まります。女性の骨量は、成長期に増加し20歳頃に最大骨量に達します。40歳代に入ると卵巣機能が衰え始め骨量が減少してきます。閉経前後の50歳頃からは女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が急激に低下し、さらに骨量の減少をきたします。エストロゲンは、破骨細胞(古い骨を吸収する細胞)と、骨芽細胞(新しい骨を作る細胞)の両方に作用します。閉経に伴いエストロゲンが欠乏することで、破骨細胞による骨吸収が亢進して、骨量が減少すると考えられています。また、ダイエットや偏食(カルシウム摂取不足)、運動不足、日光照射不足、喫煙、過度のアルコール摂取などの生活習慣も骨粗しょう症の原因となります。生涯を通じての骨粗しょう症の予防は、獲得する最大骨量を多くして、骨量減少を最小限にとどめることを基本とし、生活の中で除去できる危険因子を早期に取り除くこと、といえます。
骨粗しょう症の診断は、骨粗しょう症に特徴的な脆弱性骨折(軽微な外力によって発生した骨折で立った姿勢からの転倒やそれより弱い外力での骨折)の有無、および骨密度の数値などを参考にして行います。診断がつけば、他の疾患が原因となっていない原発性骨粗しょう症なのか、あるいは疾患が原因となっている続発性骨粗しょう症なのかを鑑別し、その結果をもとに治療方針を検討します。
問診
問診では骨粗しょう症に関して質問します。食事や運動、飲酒・喫煙などの生活習慣や、これまでの骨折および病気の既往、両親の大腿骨近位部骨折歴、骨粗しょう症の原因になりうる薬剤(ステロイドなど)の使用歴、年齢や閉経の時期などをうかがいます。これらは診断するうえで大切な手がかりとなります。
身体診察
身長と体重、背骨の変形、背部痛の有無などについて確認します。25歳頃の身長と比べてどの程度縮んでいるかということも、診断するうえでの指標になります。
骨密度検査
骨密度は骨の強さを判定するための代表的な指標です。骨密度検査では骨の中にカルシウムなどのミネラルがどの程度あるのかを測定します。
DXA デキサ法
Dual-energy X-ray absorptiometry(DXA デキサ)を用いて腰椎と大腿骨近位部(左右どちらか、インプラントが入っているときは反対側)の両方を測定します。この腰椎と大腿骨近位部で測定する意義は全身の骨密度を反映すること、骨粗しょう症の薬物治療効果判定に有用であるという点で当院ではDXAを使用して骨密度を正確に評価しています。
骨粗しょう症は痛みなどの自覚症状がなく、発症し進行するケースがほとんどです。背中や腰に痛みを感じたり、身長が縮んだりといった自覚症状が出た時には、かなり症状が悪化していることがあります。早期の診断と治療がとても重要です。骨密度検査は、骨の健康を知るうえで重要な手がかりとなります。とくに女性は症状が無くても、40歳を過ぎたら定期的な骨密度検査をお勧めします。
レントゲン検査
せぼね(胸椎や腰椎)のX線写真を撮り、知らないうちに骨折してないか(脆弱性骨折の有無)や変形の有無、骨粗鬆化(骨がスカスカな状態になること)の有無を確認します。他の病気と区別するためにも必要な検査です。
血液検査
骨形成マーカーとしてP1NP(Ⅰ型プロコラーゲン-N-プロペプチド)、骨吸収マーカーとしてTRACP-5b(酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ-5b)を用いて骨吸収促進剤や骨吸収抑制剤の選択判断、薬剤の効果判定をします。その他骨代謝に重要なビタミンとしてビタミンKの充足度はucOC(低カルボキシル化オステオカルシン)やビタミンDの充足度は25(OH)D(25ヒドロキシビタミンD)で判定します。また腎機能、intactPTH、ALP、血中Ca濃度、血中リン濃度、アルブミンなど必要に応じて採血して評価します。
骨粗しょう症はタイプによって治療に用いる薬剤が異なります。一般的にビスホスホネート(骨の吸収を抑える薬 商品名 ボナロン ベネット ボノテオ ボンビバ)が第一選択となりますが閉経後早期で骨吸収が亢進している方は、長期間の投与となることを考慮すると選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM:selective estrogen receptor modulator:骨に対してエストロゲン様作用を有する薬剤 商品名 エビスタ ビビアント)が第一選択となります。また負のカルシウムバランスが骨吸収亢進に関与している方にはカルシウムバランスの正常化を目的に活性型ビタミンD3 の投与を追加しています。ビスホスホネート等使用していてもなかなか骨密度の改善がみられない低骨密度の方にはデノスマブ(抗RANKL抗体)、脆弱性骨折の既往があり低骨密度の方や骨密度が著しく低く骨折リスクが高い重症骨粗しょう症の方にはPTH製剤(テリパラチド 商品名 テリボン)、副甲状腺ホルモン関連タンパク(アバロパラチド 商品名 オスタバロ)、ロモソズマブ(抗スクレロスチン抗体 商品名 イベニティ)を当院では用いて治療しています。患者様の年齢や病態に応じてこれらの治療薬から最適な治療薬を選択します。
骨を強化する生活習慣のポイントは、食事・運動・日光浴です。良い習慣を身につけて、骨粗しょう症を予防しながらイキイキとした毎日を送りましょう。
骨密度を増加させるためにはカルシウムの摂取とともに、カルシウムの吸収を促進するビタミンDや、骨形成を促進するビタミンとしてビタミンKなどの栄養素も必要です。エネルギーと栄養素を過不足なく摂取することがポイントになります。
牛乳・乳製品は、カルシウムの含有量が豊富なだけでなく、吸収率もすぐれています。適量の牛乳・乳製品を積極的に摂りましょう。カルシウム摂取量を増やす工夫として、小松菜などの緑黄色野菜、ひじきなどの海藻、豆腐などの大豆製品なども取り入れると良いでしょう。
ビタミンDは骨量を保つうえで重要な栄養素で、食事と日光(紫外線)から体内に供給します。魚類やきくらげなどの食品を意識して摂りましょう。ビタミンDは日光が皮膚に当たることで活性化します。手や足に1日15分程度、日光を浴びるだけでも効果が期待できます。
ビタミンKは納豆や海藻類、ほうれん草やブロッコリーなどに含まれています。これらの食品を毎日の食事にバランスよく取り入れましょう。
運動不足は骨密度を低下させる要因の一つです。適度な運動は骨に圧力がかかり、その刺激が骨の形成を促進します。日常のなかに散歩や階段昇降などの運動を習慣として取り入れましょう。また、運動は転倒予防にも重要な役割を担っています。運動不足は筋肉量の低下を起こし、転倒リスクが高まります。転倒は高齢になるにつれて発生頻度が増加しますが、転倒により、大腿骨頚部を骨折してしまうと経過によっては寝たきりの生活を余儀なくされます。無理のない運動を継続して行い、骨と筋肉の健康を維持していきましょう。
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